「大学院」で学ぶ意義 ~ソーシャルワーカーから大学教員になりました!~
皆さん こんにちは。人間学部人間福祉学科准教授の高橋明美です。2022年4月から本学に准教授として着任し、社会福祉政策や福祉マネジメントなどを学部生に教えています。また専門職大学院の授業も担当いたします。主な研究領域は、福祉マネジメントのほか韓国の社会福祉です。
私は、もともと現場のソーシャルワーカーだったのですが、社会人として大学院に通ったことがきっかけで、大学教員となりました。普通のソーシャルワーカーが、なぜ韓国の社会福祉を研究するようになり、そして大学教員となったのか。今回は、大学院に通ったことで人生が大転換した私が、大学院で学ぶ意義などを実体験からお伝えします。
1. ソーシャルワーカーとしての実践
私は1990年に大学の社会福祉学科を卒業後、主として都内の社会福祉法人で生活相談員として、高齢者福祉分野を中心にソーシャルワーカーとして実践活動をしてきました。ちょうど社会福祉基礎構造改革が始まり、制度の枠組みが大きく動いている時期でした。
そして、2000年に介護保険制度が始まってからは、「介護支援専門員(ケアマネジャー)」として、利用者様のお宅を毎日自転車で訪問し、ケアプランの作成などを行っていました。教科書などでも「措置から契約へ」、「老人福祉から介護保険へ」として説明されている部分を学んできたことを、現場で実際に乗り切ってきました。
また、経験を積むにつれ法人の中での職位も上がっていき、利用者の支援を行う一方で、居宅介護支援事業所や地域包括支援センターの所長として、職員とサービス、そしてお金のマネジメントをするようになりました。さらに在宅福祉サービスだけではなく、特別養護老人ホームのマネジメントも経験し、利用者お一人おひとりの支援とは別に、人とお金を動かすことの難しさを感じるようになっていました。
2.大学院進学のきっかけ
日々利用者さんの支援と事業所の運営に追われていた私ですが、法人の経営会議に加わるようになり、経営会議などで財政面以外の議論が少ないとことに気づき、「このままではサービスの質の議論がおきざりになってしまうのではないか」という問題意識を持つようになりました。そして社会福祉基礎構造改革や介護保険制度の施行など、自分が現場で乗り切ってきたことを、大きな視点でみてみたいという気持ちもわいてきました。
また大学からの実習生を指導している中で、自分が学んできた社会福祉の知識がすでに古くなっており、体系的な学び直しが必要な時期にきているとも思っていました。
しかし、すぐに「では大学院へ!」となったわけではありません。日々の業務と学修が両立できるのか?職場の理解は得られるか?そもそも、自分には学ぶ力があるのだろうか?などという心配が次々に出てきて、決断するまでに1年くらいかかりました。しかし、法人に自治体全体の介護職員の研修を実施する研修センターが新設され、研修立案を行う職に異動したことから、「自分に知識がないと立案も難しい」と決断し、社会人大学院生となりました。
2. 大学院での日々
社会人大学生としての日々は、想像通り大忙しで、時間のやりくりに追われてはいましたが、充実感に満ちた毎日でした。通常の業務を行いながら、平日の夜間数日と土曜日に大学院に通うというスケジュールで学んでいました。しかし、福祉の現場ですから、緊急事態がおこることもあり、タクシーで大学院に向かったり、どうにも都合がつかず急にお休みすることもありました。授業での課題も、土曜日に集中的に行うようにし、土曜日は朝から夜まで大学にいました。
授業は本当に楽しく、先生方から教えていただくことだけでなく、仲間とのディスカッションがそのまま力となっていくことが実感できました。そして、現場の課題が政策や歴史とつながっていることが理解でき、解決の糸口を見つけることができるようになりました。
また、修士課程2年生のときに、「院生交流」として韓国の社会福祉現場を訪問する機会を得たことから、韓国の社会福祉についての興味や関心を持つようになり、そこから人生が大きく動き出しました。
3. 大学院を修了した後は
大学院在学中から、現場での経験を積むだけはなく、現場での課題解決や職員育成のお手伝い、そして後進の育成をしてみたいという気持ちが生まれてきました。また、韓国の福祉についてもっと研究したいという気持ちも強くなりました。そして、思い切って長年勤めた職場をやめ、2011年から独立型社会福祉士として開業し、社会福祉士会や社会福祉施設での研修活動や、福祉サービス第三者評価事業の評価者としての活動、そしていくつかの大学で非常勤講師をするようになりました。
また、韓国の社会福祉施設や協会での現場での研修活動も行ったり、日本式介護を導入したいという会社のコンサルティングなども行ってきました。ちなみに、韓国語も話せます。
そして、2022年から本学の専任教員として着任し、活動しています。
4. 大学院で学ぶ意義とは
長年ソーシャルワーカーであった私は、多くの経験を積んできましたが、大学院での学びを通し、それらを知識として体系的に積みなおすことができたと考えています。論理的な思考や展開、研究の基礎も大学院で学びました。仲間とのディスカッションを通し、自分の知識の薄さや視野の狭さに気づき、勉強するモチベーションをさらに得ることもできました。大学院での学ぶことで、自分の可能性を広げることにもなりました。
これから専門職大学院で多くの皆様と出会い、お互いの学びを深めることがとても楽しみです。
この記事を書いた人
■高橋 明美 准教授
■担当科目
社会福祉施設論、福祉人材養成論、課題プロジェクト研究
■研究テーマ
社会福祉法人および福祉サービス経営 、韓国の社会福祉(高齢者分野を中心に)、高齢者福祉の歴史、外国人介護職員