大学院

福祉医療の未来を創る:専門職大学院で学ぶマネジメント

2024.05.17
(※新たな専門職大学院の講義がスタートして約1か月がたちました。今回のコラムは、これまでの授業の展開や学生たちの取り組みを、研究科委員長の亀川先生に振り返っていただいたものです)

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専門職大学院福祉医療マネジメント研究科は、設立から1か月が経過し、本格的な授業が進行中です。

主に対面授業を行っていますが、遠隔地の方や授業時間に間に合わない方のために、一部の授業ではハイフレックス方式を採用しています。

 

🔳 主な学びの対象者

福祉医療マネジメント研究科では、以下の専門職や経営・管理に携わる方がマネジメントを学びます。

  • 保育や幼稚園、その他の学校教育に携わる方
  • 病院の医師や看護師、理学療法士などのコメディカル
  • 介護施設で働く介護福祉士や相談支援を行う社会福祉士
  • 福祉医療事業の経営や管理に携わる方々

主に実務に携わる社会人を対象としていますが、福祉医療分野でのキャリアを目指す方々も歓迎しています。

 

🔳 マネジメントの必要性と課題

福祉医療の仕事は、人間の尊厳を守る対人サービスであり、それぞれに固有の専門的知識と技術が必要です。しかし、多くの方々がマネジメントの学習機会を持たないため、個々の力を最大限に発揮できるような多職種連携の組織構築方法や組織資源の配分について悩んでいます

 

🔳 一般的なビジネススクール(MBA)との違い

一般的なビジネススクール(MBA)は欧米流の経営学を基礎とし、リターンとコストを巡る競争の術を学びますが、福祉医療の仕事に就く方々の行動原理は異なります。非営利法人は、収入の多くを社会に依存し、費用となる活動も制限されています。規制や収益事業への参入制限がある中で、持続可能な組織運営と成長のためのマネジメントが必要です。専門職の賃金はその知識と技術水準に応じて標準化されますが、それが逆に専門職の組織的ノウハウの向上を制限し、経営管理や起業意識の喪失に繋がっているかもしれません。

 

🔳 社会的背景と福祉医療の重要性

先進諸国の多くで少子高齢化が進んでいます。働き手が減り、健康に不安のある人や介護の必要な人が増えます。多くの人は長寿を望みますが、働けない人を支えるには、福祉医療サービスの生産性を高めねばなりません。一人ひとりが優秀であっても、適切なマネジメントなしに多職種連携の生産性は向上せず、所得の増加も叶いません。社会を維持し、発展させるためには、AI(人工知能)などのリーディング産業と同等もしくはそれ以上に福祉医療分野に資源を投下し、効率的な運営をしなければなりません。

 

🔳 授業の様子と学生の反応

私が担当している経営学Ⅰでは、現在16名の履修者がおります。彼ら・彼女らは、それぞれに異なる経験と問題意識を持ちながらも、マネジメントの必要性を認識し、使い慣れない経営学や経済学の言葉を吸収し、コミュニケーション・ツールとして活用し始めています。

マネジメントの関する専門用語は、ほとんど初めて接する言葉だと思いますが、実務経験がマネジメントの基礎的知識と融合するのに時間を要しないようです。180分の授業時間は、あっという間に過ぎてしまい、時間をオーバーしてしまうこともあります。それは学生のやる気が伝わってくるからです。理解できない内容に目が泳ぎ、実務としっくりくる内容には頷きます。

 

🔳 働きながら学ぶ人々のネットワーク

働きながら学ぶ人の知欲には感服させられますが、職務内容や経験の異なる社会人のネットワークが、これからの福祉医療のインフラストラクチャーを形成します。日々の学びが実務に還元されるという期待は、授業をすることで確信に近づいております。

 

大学院には、日々の職務に没頭していると見ることのできない景色があります。なかなかの絶景だと思います。是非、眺望してみてください。

 

 

この記事を書いた人

 

■亀川 雅人 教授(研究科委員長)
■担当科目
経営学Ⅰ、企業財務論、ビジネスプラン、課題プロジェクト研究
■研究テーマ
資本・組織の価値評価を中心とした経営学と経済学の中間領域、起業家精神、株式市場の理論等