医療・介護専門職がマネジメントを学ぶ普遍性 ~同じ問題意識を持つ仲間と学んでみませんか
🔳多職種連携が求める有機的なマネジメント
医療・介護従事者として現場で働く者にとっては、専門的な知識や技術を学び、実際の診療や介護を通して研鑽を積み、多くの人達の健康達成度やQOL (Quality of life)の向上に貢献することが、最も大切な社会的責任となります。しかし、今の医療・介護領域は、多くの専門職が協同する多職種連携やチーム医療が当たり前となり、専門職といえども単独で業務をこなすだけでは、多くの成果を望めない環境となっています。
そのような中で、専門職集団としてスタッフの専門性、個性や能力をまとめ上げ、チームや組織を効果的、有機的にマネジメントすることができれば、個人の力では成し遂げられない集団としての大きな結果を得て、より多くの成果を社会に還元することが可能となります。
🔳医療・福祉現場における経営学的アプローチの可能性
異なるデモグラフィックやバックグラウンドを持った専門職メンバーが集まる組織の運営は、それぞれがチームの目的、互いの職務や役割を理解し、相互補完的で信頼できる関係を構築することが基盤となります。このような現場をマネジメントするにあたりヒントになるのが、「正解のない中で、最善の策を導くために、先人の知恵や英知、研究や実験結果などのエビデンスを集約した思考方法」である、経営学や経営理論です。
医療・介護現場に従事する私たちは、「医学」に関連した学問の領域の知見を活用し、目の前の患者や利用者を観察、評価したうえで問題点を整理し、問い、調べ、学ぶことで研鑽を積み、科学的根拠に基づいたより良い診療や介護を提供することを日々の仕事にしています。その視座をもうすこし高め、より良い医療・介護提供体制を築くために、現状を観察し、評価し、問題点を解決していくことを考える際に、経営理論が活用できるのです。
🔳合理的意思決定を支える実践科学としての経営理論
経営学や経営理論は、自らが属する組織が持つ「ヒト」「モノ」「カネ」そして「情報」を有効に活用することで最大限の結果を創造し、その組織の「価値」を高めることを目的とした、経営者やマネジャーが合理的でバランスのとれた意思決定を行うことを助けるための実践科学です。
その歴史は学問としてはまだ浅い領域でもありますが、それでもこれまでに多くのエビデンスが蓄積されており、医療や介護の現場においても応用可能であると思われる内容も多く存在します。これらの経営理論を活用し、日頃から最善策を求める思考方法のトレーニングを重ねておくことは、たとえ複雑な状況に置かれたとしても、必要な情報を収集・整理して分析を行うことで、戦略的な方針や行動を選びとるための基礎となるのです。
🔳問題意識を共有する仲間とのディスカッションがもたらすもの
一方、経営理論は正解のない中で最善策を導くための「公式」であるため、教科書で学んだだけでは患者を診療することが難しいのと同様、応用問題を解き、リアルワールドにおいても実現可能な具体的な取り組みを考え、勇気をもって実際に実行するなど「実践」を積む必要があります。このようなマネジメントの理論と実践の両輪を回すための前提としては、「阻害要因の洗い出し」や「解像度の高い言語化」など、課題を明確化・可視化して第三者に伝えることのできる能力の開発が必要になりますが、このようなスキルの獲得や向上には、同じ問題意識を持った仲間とのディスカッションが欠かせない要素となります。
本研究科には、「医療・介護現場や自分の職場を、マネジメントを通して良くしていきたい」という普遍的な思いを持った多くの医療・介護従事者が集っています。どうぞ、その扉を開けて、同じ目的を持った仲間たちと、自分の学びを深め、実践し、そしてその成果を社会に還元する、という志を実現してください。