3月24日(日) 専門職大学院福祉医療マネジメント研究科「オープンキャンパス&ウェルビーイング社会デザイン研究学会」を開催しました!
3月24日(日) 専門職大学院福祉医療マネジメント研究科「オープンキャンパス&ウェルビーイング社会デザイン研究学会」を開催しました。
オープンキャンパスでは 、キャンパスツアーや個別相談に引き続き、東京都高齢者福祉施設協議会会長・社会福祉法人三交会の田中雅英理事長と、専門職大学院福祉医療マネジメント研究科教授亀川雅人先生によるトークセッション、「福祉施設に必要なマネジメントとは」が行われました。
トークセッションの冒頭に、田中理事長がご自身も特別養護老人ホームの施設長に就任したのち激務の中で大学院に通われ、多くの仲間の助けや教員の指導で修士号・博士号を取得されたこと、現場の課題を研究することの面白さや、キャリア形成上での修士号・博士号を取得する意義についてお話をくださいました。
その後、田中理事長と亀川教授により、以下のような話題でトークセッションが行われました。
まずは、福祉医療業界で最大の課題の一つでもある人材不足、特に外国人介護職員の採用・育成・定着についてです。田中理事長からは、コロナ禍や円安などの要因で外国人介護職員の採用が難しくなっている現状があること、外国人介護職員には日本語や専門用語の習得に加え、利用者を支援するためにはオノマトペや文化の理解を進める必要があるとのお話しがありました。
亀川教授から「対人サービスにおける標準化の難しさ」が示され、田中理事長は、対人サービスには「心を伝えあう」という点で、特に難しい課題があると話され、これには会場からも共感の声ももれていました。
次いで、法人間や他分野との連携についてです。福祉施設経営には多岐にわたる課題があり、一つの法人では対応できないことから、法人間や他分野との連携をどう進めるかについて意見が交わされました。田中理事長からは、例えば多くの法人が合同で採用活動などを行ったり、区内の法人が集まって職員研修を行うなどの取り組みが実際に行われていることなどについてご説明がありました。そして、地方においては、地域全体がダウンサイジングしていく中、町おこしや村おこしから考えていかねばならず、これは福祉分野だけでは難しいことから、多くの業種や法人での連携が不可欠になっている現状にあることがお話しされました。
これに関連し、亀川教授より、福祉施設を経営している法人は中小規模であることが多いので、人材面で経営の難しさがあるのではとの問いかけがあり、田中理事長は、施設長だけが経営を行うのではなく、自分の右腕や左腕を作っていくのが重要であること、事業を継続するかどうかの決断を早くすることが大切だと話されていました。
三つ目は、福祉分野におけるDXの推進についてです。亀川教授より、社会福祉分野では利用者の多様性や、業務標準化の問題でDX化が遅れているのではとの提起がなされ、田中理事長からは、今後はDXの推進とともに、SDGsへの取り組みを強化して地域に還元していくことが重要だとのお話がありました。
四つ目は、政治への働きかけの重要性です。社会福祉施設においては、収入は「公定価格」で決まっていることから、制度全体を変える取り組みを行わななければ経営が改善しないこと、それには政策を作る側の「政治」に働きかけることが大変重要であることが、田中理事長より話されました。
今回のトークセッションでは、福祉施設のマネジメントにおいては、一施設、一法人の経営だけではなく、地域全体や、政治への視点と取り組みが欠かせないことが示されました。
また会場から、外国人介護職員を育成するための工夫についての問があり、田中理事長から「相手の文化や宗教を受け入れる社内文化を作る」というお答えがあったのが印象的でした。
40分という短いセッション時間ではありましたが、福祉経営に求められる姿勢や視点、今後の課題が示され、凝縮された時間でした。
専門職大学院では、今後も、現場の課題を掘り下げ、ともに解決策を探っていく学びを続けていきます。(人間福祉学科 高橋明美)