大学院

【福祉医療マネジメント研究科】アゼリーグループ施設見学&出張セミナーを開催しました

2025.02.13

2025年1月24日(金)、アゼリーグループの江戸川区にある保育施設を見学し、その後、施設長・園長・マネジャークラス職員を対象に出張セミナーを開催しました。アゼリーグループは、江戸川区や千葉県を中心に高齢者施設や保育施設を運営し、地域福祉に貢献している法人であり、本研究科のアドバイザリーボードとしても関わりがあります。

グループのコンセプトは、「福祉・教育・医療の提供を通して地域社会に貢献する」というもので、『福祉・教育・医療』という生活に必要不可欠な三つのサービスを提供し、 グループのメリットを最大限に活かして、地域や利用者の方へ各種サービス支援を展開されています。

■先進的な保育の現場を体験

アゼリー保育園では、センサリーインクルーシブ保育(スヌーズレンルーム)、STEAM保育、教育特化型保育、自立支援型保育という4つの柱で保育を行っています。

センサリーインクルーシブ保育では、感覚過敏や感覚調節の難しさをもつ人や子どものためのスヌーズレンを実施しています。スヌーズレンルームには、光・音・匂い・振動・触覚の素材等、感覚を優しくするものが設置されてあります。きらきらとしたミラーボールや、海の中のような色合いが感じられる部屋の中で、ゆっくりと過ごせます。見学に参加したメンバーもスヌーズレンルームでゆっくりと過ごし、園長先生にご説明して頂きました。

またアゼリー保育園では、乳児期は『自立支援型保育』の中で自己肯定感を培い、それを基に、幼児期では『教育特化型保育』として提供する「体験活動」の中で『STEAM保育』の手法を取り入れ、遊びながら学べる教育・保育を提供しているそうです。

最初は『なんでだろう?』『不思議だな~?』と思う事から始まり、次第に『どうして?』『なんで?』と前のめりになって興味を示し、最後には『知りたい!』『やりたい!』と能動的になっていく、というプロセスを大切にしているそうです。

見学に伺った際も、細長い風船と細いビニール紐を使って、紐をたこのように空中に飛ばせるかどうか、というアクティビティの最中で、通所施設の高齢者と保育園児が交流しつつ、実験(?)に真剣に、そして楽しく取り組んでいました。見学者の我々も一緒に参加し、楽しい時間でした。

13時から14時半まで、1時間半でしたが、あっという間に時間が過ぎました。アゼリーグループの来栖宏二様はじめ、職員の皆様にご案内いただき、誠にありがとうございました。

続けて、アゼリーグループの施設長・園長・マネジャークラス職員を対象とした出張セミナーを開催し、本学教員2名が講演・演習を行いました。

■多様な価値観を活かす「類人猿診断」と組織開発

田嶋英行教授は「組織開発と類人猿診断」をテーマに講演。職場=チームであり、多様な価値観の尊重だけでなく、組織内の関係性を深めることが重要と説明しました。その一環として、職場の人間関係を4つのタイプに分類する「類人猿診断」を紹介し、ワークを実施。

  • オランウータン(自由):単独行動で職人肌
  • チンパンジー(政治的):ムラがあるがリーダーシップがある
  • ゴリラ(保護的):秩序を重んじる
  • ボノボ(友好的):愛嬌があり、協調を重視

参加者は自身のタイプを判断し、グループで共有。さらに、組織で企画を進める際の交渉方法をタイプ別に検討し、発表しました。ワークを通じ、職場における多様な価値観の理解が深まり、今後のコミュニケーションに活かせる学びとなりました。

■主体性を育む小規模チームの可能性

今﨑常秀特任准教授は「主体的な活動を促す小規模チームの可能性」について講演。部下の主体性・自主性を育てる方法として、星野リゾートのエンパワーメントの取り組みや、ミスミグループの三枝匡氏の「創る・作る・売る」という経営戦略を紹介しました。組織を活性化するためのポイントとして、以下の6点を挙げました。

  1. 小規模チームを編成し、互いの特性を理解できる環境を作る
  2. チーム単位での運営により、役割を明確化し責任感を育む
  3. 各チームの自主性・主体性を重視する
  4. 数字を公開し、経営に対する意識を高める
  5. PDCAサイクルを活用し、継続的に改善を図る
  6. 組織全体の目標・システムを構築する

特に、エンパワーメントを実現するには時間がかかり、試行錯誤が必要であることを強調。福祉分野に応用する際は、職員の自主性を育て、職種間の連携を強化し、採算意識を育むことが重要と指摘しました。現場の創意工夫を経営改善につなげることで、利用者サービスの向上と施設の持続的な発展が期待されます。

今回の施設見学と出張セミナーを通じて、アゼリーグループの先進的な取り組みを学び、組織運営や人材育成に関する貴重な知見を共有することができました。長時間にもかかわらず、31名の職員の皆さまに熱心にご参加いただき、活発な議論が交わされました。今後もこのような交流や研修を継続し、相互の学びを深めていきたいと思います。

福祉医療マネジメント研究科 鳥羽美香