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「育てにくい」と感じる子ども(2)
前回はコミュニケーションについてお話ししました。
今回は、「愛着」についてお話しようと思います。
1960年代に、イギリスの医師John Bowlbyは著書「母子関係の理論」の中で「愛着行動」について言及しています。
これが今日心理学で言われる愛着理論です。
愛着とは、自分以外の人間や物に対して親密な距離を求め、
自分の側にその人や物がある事で安心感が得られるという事を指します。
この中でも特に他の人間に対して愛着を持つことが、人間の発達に重要な役割を果たすと考えられています。
子どもの愛着行動は子どもがお母さん(または、自分の養育者)と他の人間を区別し、
お母さんを安全基地として少しずつ周りを探り、また安全基地であるお母さんの元へ戻るという、
子どもの社会生活の基盤となるものです。
新しい場所に来たとき、見知らぬ人と会った時。
大人でも全く未知の物に出会ったときは緊張すると思いますが、子どもはもっと緊張します。
それに挑戦できるのは、お母さんという安全基地があるからです。
また、こうした子どもの愛着行動がある事で、お母さんの方も子どもが可愛い、と思えるようになったりします。
いくら泣いていても、お母さんがだっこしてあやすと泣き止んで笑う、
お母さんの行くところへ一生懸命ついていく。お母さんに甘える。
「この子は私がいないと駄目なんだ、守らなくては」と感じる。
こうした子どもの愛着行動と、それに応えるお母さん、
お母さんにあやして貰えた事が嬉しくて、笑う子ども、といったやりとりから、親子関係は育ってきます。
つまり、親子関係が育つためには、こうした母と子のコミュニケーションがとても大事なのです。
ところが。あやしても笑わない、視線を合わさない、抱っこされるのを嫌がる。
そんな赤ちゃんだったとしたらどうでしょう。
「あやしても笑わないなんて、嫌だったのかな」
「こっちを見てくれないなんて、寂しいな」
「この子はなんで抱っこを嫌がるんだろう」
子どもの笑顔が欲しくて頑張るお母さんでも、段々寂しくなってしまうのではないでしょうか。
子どもに笑って欲しくて一生懸命投げたコミュニケーションのボールを、子どもは全然拾ってくれない、
気付いているかどうかも分からない状態で、辛抱強く何度も何度もボールを投げるのは、
とても辛い作業に感じられてしまうでしょう。
大人同士でも、自分とコミュニケーションを取ろうとしない相手と会話を続けるのはとても大変な事だと思います。
続かない会話、こわばる笑顔、早く過ぎて欲しいと思う時間・・・・
コミュニケーションが取れない、という事は想像以上に悲しく、辛いものです。
自分が拒否されている、と感じることもあるかもしれません。
それと同じように、親子間でのやりとりがうまくいかない、という経験が積み重なると、
お母さんは自分が否定されているような気分になることもあると思います。
どういうボールを投げたら、子どもが応えてくれるのか。
あらゆる手を出し尽くして途方に暮れているお母さんもいるのではないでしょうか。
この状態が続くと、ボールを投げる事にも疲れ、子どもとコミュニケーションを取ろうとする意欲すら
無くなってしまうこともあるかもしれません。
これが、「育てにくい」と感じる原因のひとつと考えられます。
ではなぜ、お母さんへコミュニケーションのボールを投げない、
お母さんからのボールを受け止めづらい子どもがいるのでしょうか。
これについては次回考えていこうと思います。