留学体験談
【カナダ】ブロック大学 フィールドワークレポート①
留学先 :Brock University
学部・学科 :保健医療技術学部 理学療法学科
留学期間 :2019年8月7日~8月27日
氏名・学年 :A・Tさん(留学時:1年生)
1.ホームステイでの出来事
今回のフィールドワークでは、ポーランドからの移民であるホストマザーのお宅にホームステイをさせてもらい、その家にはすでに私の他にブロック大学の留学生がホームステイしていました。韓国人、メキシコ人、日本人の留学生がおり、食卓を囲む時はお互いの国のことを話したり、先に通っていた留学生からはブロック大学のことや大学や家の周りのことを教えてもらったりと、共通語である第二言語の英語で会話することはとても興味深い経験でした。また、純粋なカナダ人でないホストマザーからイミグレーションの実体験を聞けたことはとても印象に残っています。他国のイミグレーションの制度の違いや、なぜカナダを選んだのかなど、皆が経験することではないことについて話を聞くことはとても貴重でした。ホストマザーはいつも親しみやすい雰囲気でたくさん話しかけてくれ、たくさんの場所へ行き、たくさんのことを見て、経験して、たくさんのことを吸収してくるようにと自由にさせていてくれました。そのおかげで20日間という限られた時間を有効に使い、行きたいところへ行き、見たいものを見ることができました。
ホームステイをしてよかったと思うところは、様々な人との出会いとそこから広がる人の輪、考え方の多様性に触れられるという点です。見知らぬ人と共同生活を送ることに不安やストレスを感じる人もいるかもしれませんが、人生において1度はホームステイや留学はしておくべきだと改めて感じました。
2.今後の英語学習について
今後はGCIの授業の他に、ランゲージサロンに行ける時は行き、外国人の先生と英語での会話を通して自然な日常英会話を積極的に学んでいきたいと思います。また、TOEICでは直近の目標は800点とし、それを超えられるように対策していこうと思います(11月13日現在、755点)。今後は仕事で英語を活用できるように医療用語も引き続き学んでいこうと思います。
3.カナダのフィールドワークで学んだこと
フィールドワークのプログラムの中で一番印象に残ったことは、アルツハイマーセンターを訪れたことです。アルツハイマーセンターでは、どのように地域ぐるみでアルツハイマーを患うクライアントやその家族の方々をサポートしているかを見せていただきました。センターには職員の方だけでなく、ボランティアの方々も多数おり、職員とボランティアがお互い協力し合いながらクライアントをサポートしているようでした。外出が平気なクライアントや他者との交流が苦でないクライアントには、センターでの様々なプログラムを提供しているとのことでした。そのプログラムは、ガーデニングセラピーやアートセラピーなどだそうです。また、外出することを好まないクライアントには自宅に訪問し、話し相手になったり、外出も訪問も好まないクライアントには定期的に電話をかけて話し相手になったりしているとのことでした。アルツハイマーを患うクライアントに対し、このセンターが提供しようとしていることは、「共感」・「コミュニケーション」・「環境」ということで、辛抱強く、思いやりを持って接し、明るく静かで綺麗な環境を整備しているとのことでした。
大切にしている考え方は、アルツハイマー(認知症)とともに生きる方々に対してどのように優しくなれるか(How can we be kind to people living with dementia?)ということで、自立した生活を送るためにはどのようなサポートが必要か、楽に生きられる方法一緒に考えてサポートしているとのことでした。例えば、手先が使いづらい方ならば、ファスナー付きでベルトの必要なズボンとウエストがゴムのゆったりとしたズボンのどちらを履きたいと思うのかといったことです。現在の私たちにとってファスナーが付いていてもベルトが必要だとしてもさほど不自由を感じることがなく、この感覚が当たり前だと思ってしまっています。しかし、もし自分の体が思うように動かないとしたら、そう考えてみると視座が変わります。それに伴って見えてくることも変わります。このアルツハイマーセンターでは加齢現象のシミュレーションにより、そういった感覚の啓発をしています。実際に様々な疾患別の特徴的な症状を再現し、それを体験することができます。
まずは耳栓をして聴力の低下を再現し、靴下を脱ぎ、靴の中にポップコーンの種を入れて神経痛の再現をします。そして、それと同側の足に重錘をつけ、利き手に指先に綿を詰められた手袋をつけ、指先の感覚の鈍さを再現し、中指に棒を入れて曲がらないようにします。同じ手の親指と人差し指を対立させた状態でテープ固定をし、リウマチで動かしづらくなった指を再現します。最後に装飾の施された眼鏡をかけます。その装飾とは3種類あり、脳卒中・白内障・糖尿病の患者さんの目の見え方を再現したものです。そのような状態になった後、部屋を移動し、職員の方の指示に従って日常的に行っているようなタスクを行いました。コップに水を注ぐ、下着をつける(女性のみ)、懐中電灯に電池を入れるといったことです。そうした簡単な動作も手や目、足が不自由な状態では想像以上に大変な重労働で、建物内の移動ですら比較的安全であると分かっていても見えないことで恐怖感が増しました。
このようなシミュレーションを通してセンターの方々が伝えようとしていたのは、「Behavior has meaning」「行動には意味がある」ということでした。時にアルツハイマー患者の方々は攻撃的と表現されてしまうけれど、そう言われてしまう行動の裏には必ずその人の考えや理由があって、それをサポートする側にはわかっていてほしいとのことでした。今まで何不自由なく動いていた体が思う様に動かせなくなることは恐怖であり、もどかしく腹立たしいものでもあります。その様な気持ちを医療従事者として働くために勉強している学生のうちにこのシミュレーションを通して体験できたことはとても有意義なことだったと思います。
4.学びを活かす
FWにおいて学んだ医療英語と前述の体験から得た学びを忘れず、医療英語は外国人選手との会話やサポートの時に活かし、体験から得た学びは身体が不自由になってきた祖母との関わりの中で活かしたいと思います。祖母は認知機能の低下も見られ、何か思い出せないことがあると決まって「年取るって嫌ね」と言います。それを聞くと、今までできていたことができなくなることはどんな人にとってももどかしいことで、それに対して嫌悪感を抱いてしまうのだと想像ができます。だからこそ、祖母の立場に立ち、思いやりを持った行動をしたいとアルツハイマーセンターでのシミュレーションを通して思わされました。まずは身近な大切な人に対して、このFWで学んだことを活かしていこうと思います。
5.カナダの医療制度について
カナダでは医療費はほとんど全額税金によってまかなわれ、日本でいう保険証を持っている人は例外なく基本的な医療が受けられます。しかし、いきなり病院に行くことができないため、どんな重篤な疾患であってもホームドクターを介して医療を受けることとなります。このシステムは病院にホームドクターで診られる軽い疾患の患者が来て、先進医療や高度医療を受けるべき患者が受けられなくなることがないようにするためだと思います。そのシステムは病院を健全に安定的に運営していくためには必要な制度だと思いますが、患者からすると重症であるのではないかと不安になっている時はもどかしいのではないかと感じました。