異文化間の支援と国際社会:授業科目の紹介
1年生から開講されている授業科目「異文化間の支援と国際社会」を紹介します。この授業では、社会福祉実践において重視される人権に着目します。国際社会における人権問題に焦点を当て、マイノリティの人々が置かれている状況、人権意識の観点から支援を行うとはどういうことかを理解できるようになることを目的としています。
人間福祉学科の6名の教員が担当し、ヨーロッパ、北アメリカ、中東、中央アジア、東アジア、東南アジアにおける人権問題を取り上げます。担当教員の1人である私(湯浅)は、「シリア難民」を授業のテーマとしています。
中東の国シリアでは、2011年にアサド政権の退陣を求める市民の運動を、政府が徹底的に弾圧したことをきっかけとして、内戦が始まりました。それから10年が経過していますが、紛争は泥沼化しており、収束の道筋はいまだに見えていません。内戦によってこれまでに、560万人が国外に逃れ、660万人の国内避難民が発生しています。内戦前のシリアの人口は、約2200万人と言われていたので、半数以上のシリア人が難民となったことになります。
トルコは、シリアと911kmの国境線を共有する北の隣国です。トルコは2021年2月現在シリアからの難民を約366万人受け入れています。トルコに住むシリア難民の生活の状態を、各種の団体や組織が行った調査によって見てみましょう。都市、都市郊外、農村に住むシリア難民は、基礎的な必要を満たすために大きな困難を抱えています。国連世界食糧計画(WFP)とトルコ赤新月社(TRC)が実施した、援助を実施する前のベースライン調査(2015)によれば、南東地域に住む難民の約90%が、トルコが設定した貧困線以下で生活しています。彼らは、食べる量や回数を減らすなど、不安定な住居の借用と向き合いながら不衛生な環境で生活しています。それに加えて、大多数の難民は、冬に備えて支出を増やす一方で、気候の変動によって仕事を得る機会が減っています(UNHCR 2017)。このような困難な状況にあるシリア難民に対するUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)と日本の国際NGO「AAR 難民を助ける会」の支援活動を授業で話しています。
私は2017年4月から1年間、アンカラ大学言語歴史地理学部の在外研究員として、トルコの首都アンカラで生活しました。
下にあるのは、そのときに撮った写真です。