2017年2月28日 海外フィールドワーク カナダ(9)
【海外短期フィールドワーク2017年(2016年度)リアルタイム報告09】
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カナダブリティッシュコロンビア州立トンプソンリバーズ大学で
今年(2017年2月〜3月)も海外短期フィールドワークが行われています!
午前中は英語、午後は現地の専任の教授陣4名から心理学を学ぶことができる、日本でも有数(おそらく日本の唯一)のプログラムです。
臨場感をもってお伝えするために画像サイズが大きめです。読み込みに多少時間がかかります。ご了承ください。
今日の午前の授業です。やはり午後の授業の予習の部分を紹介します。モニカいわく、カナダの文化なども準備してあるんだけど、午後の授業がなかなかの内容だからいっぱいいっぱいだわ笑。
午後の授業の内容の情報や語彙を心理学科の教員から受け取ると、モニカはそれについて事前に下調べをしてくれます。彼女は心理学者ではないので、専門用語の意味するところは見当がつきませんので、専門的なページをウェブ等で検索して、ある程度事前知識を得ておいてくれます。ありがたいですね。
人数が6人ということもあって、席を移動したり、助け合ったりして語彙を予習していきます。モニカも手伝ってくれます。
今日はジェニーの2回目の授業なので、生理心理学。とても語彙が難しいのです。そこで事前にしっかりと予習します。
学生の皆さんの一人一人に問いかけてくれるモニカ。
昼休み後、いよいよジェニーの2回目の授業です。気合い入ってます。今日はご自身の研究を紹介。まだ数年前のほやほやの研究です。Multiple Motor Channel Theory。主に哺乳動物を対象とした、「手を対象物に伸ばし、そして掴む」という一見単純な一連の行動を、膨大な時間をかけて検討したものです。
私たちは視覚的な情報を用いて、対象物を認識し、それに手を伸ばし、それを掴んで、そして食べたりします。この手を伸ばして掴む、という一連の行動を「prehension」と言いますが、この一連の行動が飛躍的に進歩したのが視覚を主に用いるようになった霊長類からである、というのが(非常に乱暴ですが)、「primate theory」です。ジェニーの指導教員とジェニーはずっとこの仮説に疑義を唱え、prehension行動を追いかけ続けてきました。そして、この一見、統合化されたように思われる行動が、実は齧歯類でも持っている触覚由来の行動で、しかも、手を伸ばす、掴む、という行動は実は異なる進化的背景からそれぞれ発達し、そして最終的に統合された、という「multiple motor channel theory」を唱えているのです。一見、これが心理学?と思われる内容ですが、実は、対象物を掴んで口に持ってくる、という行為はその後、言語(運動性言語:ブローカ領域が関わる機能)へと発達していく、非常に大切な行動の「digit」で、この行動をつぶさに研究していくことは、まさに心理学、なのです。
さて、詳細はリンクをはっておきます。ジェニーの研究のリンク1とリンク2。研究の手法はまさに生理心理学、実験心理学の王道をいくもので、行動をつぶさに記録、観察し、それをしっかりと分析していくものです。こうした、いわば「泥臭い」作業の積み重ねが、自然科学全体の発展に寄与していることをまざまざと見せつけられますね。
他の動物、特にラット、赤毛サル、そして人間のprehension行動における差異を見ていくと、どうも我々の手を伸ばす、掴む、という行動は異なる進化的背景から生じてきたことが分かってきます。目をつぶって何かに手を伸ばし、そして掴むときの行動、生まれたばかりの赤ん坊が対象物に口から近づいていくという行動、さまざまな行動から、ジェニーの仮説検証の過程が再現されました。
目隠しをして、異なる大きさの対象物に手を伸ばすとき、私たちは、まず少し手を高いところから少し落とし込むように対象物に伸ばし、そして触れ、大きさを触覚で確認し、そして静かに掴みます。これは視覚を利用するときに、すでに対象物の大きさを把握し、ストレートに伸ばし、掴む動作とは随分異なります。このことから、伸ばす、掴む、という一見一連の活動が、主に触覚に頼って外界を把握する動物では、異なる、分離可能な活動であることが示唆されるのです。
ジェニーの授業も今日はさらに熱い。皆、難しいながらも必死に聞いています。
さらに齧歯類動物が、非常に器用に手を使うこと、左右の手を異なる目的で使い分けること、ヒゲや口もとの触覚がまず大事で、そこから手で対象物を掴む、という行動が見える(餌を食べるときなど)ことを説明してくれました。そして、こうした行動の脳内での活動部位がそれぞれ異なり、手を伸ばすのは、歩くとき左右の前肢を交互に出す動作から発達してきた可能性、掴むのは、口に対象物を含んだとき、ヒゲで対象物をとらえたとき、そのあと、手でそれを掴むという行動から発達してきた可能性を論じてくれました。
目隠しをされた人間が、手を伸ばす、掴む、という行動をとるところを、スローモーションで見ているところです。視覚を用いた場合とは本当に違います。そして、こんな単純だと思われる活動をここまでつぶさに見ていくことで、それがとても興味深い活動であることにはじめて気づきます。発見というものは、本当に我々の身近なところに存在するのですね。
今日の講義は、まるで学会のシンポジウムで最先端の研究を聴いているような内容でした。本学教員も大変感銘を受けて聞いていました。
全員で記念撮影。ありがとう、ジェニー!
さあ、今日は懇親会です。その前に、午前、午後の授業の疲れを癒やします?
3つの椅子を上手に並べて休憩。
それぞれ30分ほど休憩し、移動します。
懇親会は大学にあるパブ、ヒーローズパブで行います。
寒い—。
これは開始直後の様子ですが、心理学科の学生6人、教員3人、国際交流センター(TRU World)のメンバー2人などが来てくれました。
英語はなかなか出てこないながらも、頑張ってコミュニケ—ションをとる姿が頼もしいです。特にこうした環境では聞き取りが難しいのですが、こうしたときほど、表情や仕草といった非言語のコミュニケーションも重要であることが分かります。ともあれ、皆さん楽しんでいましたね。午後6時すぎに解散となりました。お疲れ様!
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